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パウロの説教

 

 

使徒17:16~34「パウロの説教」 

 

 おはようございます。皆さんが初めて「外国」に行ったのはいつでしたか。その時、どんなことを感じ、どのように過ごしましたか。私が初めて行った外国は高校を卒業した年のアメリカでした。一人だったのでとてもドキドキして行ったことを覚えています。

 

今日はパウロが第2回伝道旅行でギリシャに行ったときの出来事を取り上げて見ていきたいと思います。ギリシャは言わずもがな、パウロにとっては「外国」でした。

 

【アテネの町】

 パウロのアレオパゴスにおける説教は使徒の働きの中でも特に注目される説教の一つです。アテネは、BC4~5世紀にかけて学問と芸術が栄えた町でした。ソクラテスやプラトン、アリストテレスなどの偉大な哲学者たちを生み、育てたところで、哲学だけでなく、建築や彫刻でも有名なところです。けれども、BC146にローマ帝国に征服されて以来、自由都市としての権限は残されたものの、最盛期の輝きは失われ、パウロが到着したBC50年頃は、ギリシャ文化の中心ではありましたが、政治や商業の中心はコリントに移っていて、衰退し始めた頃でした。

 

 その町でパウロはどのように宣教したのでしょうか。相手がユダヤ人だったら、旧約聖書を通して、預言とその成就という観点から福音を語ることができますが、アテネに住む異邦人たちは聖書を知りません。当時の文化人・知識人たちにパウロはどう福音を語ったのか・・・これは同じく異教社会で福音を伝える私たちにとっても注目するところです。

 

 パウロはこの時、アテネでシラスとテモテを待っていましたが、町の中に偶像がいっぱいあるのを見て、心に憤りを感じました。

 

 

 皆さんはギリシャに行ったことがありますか。パルテノン神殿を始め、多くの建造物、数々の彫刻作品・芸術作品を見て、感動なさったのではないでしょうか。しかし、パウロは憤りました。そしてさっそく福音宣教を始めます。17節「会堂ではユダヤ人や神を敬う人たちと論じ、広場(アゴラ)ではそこに居合わせた人たちと毎日論じあった。」

 

 その広場で出会ったのはエピクロス派とストア派の哲学者たちでした。簡単に快楽主義と禁欲主義者という説明がされますが、今回改めて調べると、イメージが違いました。

 

 エピクロス派というのは、エピクロスという人を創始者とするグループで、「隠れて生きる」ことをモットーとし、政治や社会の混乱を避けて自給自足の共同生活を送りながら、体の健康と精神の平安を追及している人々でした。

 

 一方でストア派の人たちは、ゼノンという人を創始者とし、「自然に従って生きる」ことをモットーとしていたそうです。自分の理性に従って生きることで、世の中の時代の流れに関係なく、独立した自由を得ることができると考える人たちだそうです。

 

 

 パウロは彼らにどう受け止められたのでしょうか。18節「・・・ある者たちは『このおしゃべりは、何を言いたいのか』と言い、ほかの者たちは『彼は他国の神々の宣伝者のようだ』と言った。」 アテネの人々は「何か新しいことを話したい聞いたりすることだけで、日を過ごしていた。」(21節)ので、パウロが語った「イエスと復活」の話に『何か新しい教えだぞ』と興味をそそられたということのようです。そこで人々はパウロをアレオパゴスへ連れて行き、彼の新しい話をみんなで聞いてみようとしたのです。

 

 

 アレオパゴス=軍神マルスの丘とも呼ばれる丘で115メートルほどの高さがあります。建物で言ったら30階以上のビルです。そこでは、行政、司法、教育など大切なことが話し合われる評議会が開かれました。眼下には、広場と訳されている「アゴラ」が広がり、人々が行きかう様子が見えます。また、向かいにはアクロポリス(「高い丘の上の都市」という意味の名前を持つギリシャを象徴する文化遺産)を見ることができます。アクロポリスには、有名なパルテノン神殿を初め、他にもいくつかの神殿があり、当時も聖なる丘と認識されていました。

 

【聴衆】

 そんなアテネの町の、アレオパゴスの丘の中央に立って、パウロはどこから話を始めたでしょうか。さっきも申し上げたように、聴衆のほとんどはユダヤ人でなく異邦人ですから、いきなり旧約聖書を引用して話し始めることはできません。どう始めたら聴衆の心を開き、福音に結びつけることができるでしょう。

 

 パウロはまず(22節)「あなたがたは、あらゆる点で宗教心にあつい方々だ」と語り掛けました。(16節)心に憤りを覚えていたパウロにしては冷静というか、聴衆を尊重した言い方です。相手を受けとめつつ、彼らの興味関心に切り込みます。町にあった『知られていない神に』と刻まれた祭壇について触れたのです。

 

 アテネの人々はパウロが語っているように「あらゆる点で宗教心にあつい」生活を送っていたのでしょう。そんな中、あれやこれやと多様な神々を拝みつつ、名前も御利益も知られていない神がまだいるかもしれないと思って、残りを「知られていない神に」という祭壇にまとめて礼拝したのかもしれません。パウロはその祭壇を手始めとして、「あなたがたが知らないと告白している神がどんな神かをお教えしましょう」と言ってスタートしたのです。

 

 ここの聴衆は今までとは違い、ユダヤ人でもなければ、旧約聖書を知っている人たちでもありません。そもそも聖書の神に関心のない人たち。哲学や学問が好きで、新しいものや珍しいものが好きで、偶像が大好きな人たちです。キリスト教との接点などあるのか、まるで分らない人たちです。

 

【メッセージのポイント】

 そんな人々を前にしてパウロは、まことの神様について3つのことを述べました。

 

1⃣ 神は天地の主:24節「この世界とその中にあるすべてのものをお造りになった神は、天地の主ですから、手で造られた宮にお住みにはなりません。」

 

 アテネ人は神殿を建てれば、神はそこに住まわれると考えていました。しかしパウロは、まことの神様はこの世界を造られた天地の主であって、人間が建てた小さな宮になど閉じ込められるようなお方ではないと語ったのです。それはアテネの人たちにとって衝撃的な言葉だったでしょう。

 

 

2⃣ 神は自立的存在:25節「また、何かが足りないかのように、人の手によって仕えられる必要もありません。神ご自身がすべての人に、いのちと息と万物とを与えておられるのですから。」

 

 アテネ人は神に供え物をし、磨いてきれいにしたりすることでお世話していたのでしょう。けれどもパウロは、まことの神様はそんな風に私たちに依存しておられる方ではなく、むしろ私たちが神様にすべてを依存している存在なのだと述べています。これまたアテネの人たちにとってはびっくりし、はっとさせられることだったに違いありません。

 

 

3⃣ 神は歴史の主:26~27節「神は、一人の人からあらゆる民を造り出して、地の全面に住まわせ、それぞれに決められた時代と、住まいの境をお定めになりました。それは、神を求めさせるためです。もし人が手探りで求めることがあれば、神を見出すこともあるでしょう。確かに、神は私たち一人ひとりから遠く離れてはおられません。」

 

 アテネの人々は自分たちが作り出すものに熱心でした。また上手だったでしょう。学問であれ、芸術であれ、偶像であれ、自分たちの作り出すものの中で生きることに心が向いて、自分たち自身が創られたものであることを忘れていました。でも真実は違います。人間が神を造ったのではなく、神が人間を造ったのです。そしてその造り主であるまことの神様はこの世界の歴史を支配し導かれる方です。そしてその神を私たちは見出すことができると言うのです!

 

 パウロはローマ1:19-20でもこのように言っています。「神について知りうることは、彼らの間で明らかです。神が彼らに明らかにされたのです。神の、目に見えない性質、すなわち神の永遠の力と神性は、世界が創造されたときから被造物を通して知られ、はっきりと認められるので、彼らに弁解の余地はありません。」

 

 そしてパウロは異邦人の詩を二つ引用しました。(28-29節)なぜでしょう。まことの神様を説き明かすのに聖書以外のものも用いられることがあるのです。これらの詩は、聖書的に正しいと言えるものではないけれど、パウロはそこから聴衆の関心と洞察を引き出したと言えると思います。クリスチャンでない人たちでも、神様の偉大さを捕らえ、表現していることがあります。神様が異邦人をも用いてみわざをなされることは聖書の他の個所でも、また現代でも明らかです。

 

 と言ってもパウロの意図は、異邦人たちの詩を引っ張り出して認め、そこに権威を置くことではなく「納得できる洞察だ」と述べながら、もう一方で偶像礼拝をしている彼らの矛盾を指摘することでした。

 

【人々へのススメ】

 こうしてパウロは30節でアテネ人に迫ります。「神はそのような無知の時代を見過ごしておられましたが、今はどこででも、すべての人に悔い改めを命じておられます。」 

 

 今日を生きる多くの人も同様に、なぜ自分たちが悔い改めなければならないのか。何も間違ったことはしていない。私たちの生活には何の問題もないと考えるかもしれません。しかしパウロは、災いがあなたがたに下っていないのは、あなたがたの生き方が正しいからではなく、神様があわれみによって見過ごして来られたからだと言います。そしてもうその期間は終わって、神様は今すべての人に悔い改めを命じておられると迫るのです。

 

 この、神様の見過ごしの時代は何によって終わったのでしょうか。それはイエス・キリストがこの世に送られたことによってです。イエス様がこの地上に来られたことによって神様はご自身がどのような方であるかをかつてよりももっと明らかに示されたのです。これ以上の啓示はもうありません。神様は「お立てになった一人の方により、義をもってこの世界をさばこうとしておられる」と言います。

 

 詳細は記されていませんが「死者の中からよみがえらせて」とあるので、当然イエス様の十字架のことも語られたでしょう。パウロは、聖書を知らない異邦人の知識人たちを相手に、彼らの異教的な習慣や文学を題材として用いながら、このイエス・キリストの福音を語り、神様が命じられた悔い改めへと招き、祝福を得るようにと訴えたのです。

 

【人々の反応】

 パウロのメッセージを聞いた人々の反応はどうだったでしょうか。私たちにとってはよく理解できる光景が広がっています。(32節)

 

 一つ目の反応はあざ笑った。当時は二元論的な考え方が主流で、アテネの人々も「魂は尊いもので、肉体は滅ぶべき下等なもの」という考えでした。ですからパウロが「肉体の復活」を語ったとき、ある人々はあざ笑ったのです。何と愚かな話か!と。

 

 二つ目の反応は「そのことについては、もう一度聞くことにしよう」(別訳:いずれまた聞くことにしよう)でした。訳によって受け取る印象は少し変わりますが、それは「もう今は結構です」「いつか気が向いたらまた聞かせて」ということです。やんわりとしていますが、結局は拒絶ということでしょう。

 

 するとパウロは33節「彼らの中から出て行った。」とあります。ネガティブな反応を受けてそこから立ち去ったパウロの姿、なんだか残念な思いを持ってしまいます。けれども、34節「ある人々は彼につき従い、信仰に入った。その中には、アレオパゴスの裁判官ディオヌシオ、ダマリスという名の女の人、そのほかの人たちもいた。」という言葉に目が留まります。

 

 ネガティブな反応の人たちと比べたら、これはほんのわずかな人たちだったかもしれません。でも信じる人たちも起こされたのです!一人はアレオパゴスの裁判官ディオヌシオ。裁判官は物事を注意深く見て、聞いて、判断する人です。その彼がパウロの話を聞いて信仰に入ったのです。パウロの話は、裁判官である彼の心を動かし、信仰に導くにふさわしい内容を持っていたということだと思います。またダマリスという女性も信じました。イエス・キリストの福音は性別を超えて届く力があるのです。その他にも複数、信じる者たちがいました。

 

 

 このアテネでのパウロの宣教を見るときに、教会が建ったということでもないし、救われた人は片手で数えるほどしかいない様子だし、失敗ではなかったかという人がいます。確かに、この後パウロがアテネを去ってコリントに行ったときの様子を、Ⅰコリント2:3で見ることができますが「あなたがたのところに行ったときの私は、弱く、恐れおののいていました。」とあるように、パウロ自身、アテネでの宣教を良い気持ちで振り返れる状態にはなく、意気消沈していたのかもしれません。

 

 けれども、使徒の働き17章のこの記事は、福音宣教のひとつの側面を示していると言えます。見事な切り口で語ったとしても、信仰に入る者は決して多くないかもしれない。それは成功とは言えないかもしれない。多くの人があざけり、拒絶の反応を見せます。でも、その陰で救われる人も起こされる―――これはまさに神様のみわざです。

 

 私たちも同じく異教の地で福音に生き、福音を伝える者として、このパウロの姿からチャレンジと励ましを受けます。

 

 偶像があふれるこの世界を見て、パウロのように私たちは憤るでしょうか。人々の心がまことの神様ではないものに支配されているのを見ても、他人事、無感情、無感覚になっていないでしょうか。

 

 パウロのように、人々に関心を持ち、彼らを尊重しつつ、彼らの理解しやすい切り口を見出して、福音を伝える者でありたいと教えられます。異教的な習慣や関心を利用しながらも、まことの神様と関連づけられる点を見出してスタートさせる。そして、神様が求めておられる悔い改めをし、救いを得るようにと勧め、促すのです。宣教の結果は主に委ねます。私たちに人を変えることはできません。悔い改めと救いのみわざは神様の働きです。実際に、この後福音はヨーロッパへと広がっていったと考えられます。その時は「わずかな」「小さな」救いの実だと思えても、神様は働いておられるのです。私たちはこのまことの神様を見上げて忠実に福音を語り、主の働きの前進に仕えたいと思います。

 

 今日も各地で、自分を創造された神様を求め、神様に出会い、神様とともに歩む人生を踏み出す人が起こされていくように祈りつつ、私たちがなすべきことを行っていきましょう。

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